正式なピックルボールの世界ランキングとは?
注意したいのは、ピックルボールの世界ランキングは現時点で一本化された単一のシステムではないという点です。
ピックルボールは急成長中の新興スポーツで、ランキングの仕組みもまだ発展途上にあります。

現在はいくつかの団体やシステムが独自にランキングを発表しており、どのランキングを指すかによって順位が異なる場合があります。


ピックルボールの世界ランキングはどの組織が決める?
現状、ピックルボールのプロ選手ランキングを決定・管理している組織やシステムはいくつか存在します。
一言で「世界ランキング」と言っても複数の種類があるため、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
- PPAツアーのピックルボール世界ランキング
- APPツアーのピックルボール世界ランキング
- DUPRのピックルボール世界ランキング
- その他(UTRやGPR)のピックルボール世界ランキング
PPAツアーのピックルボール世界ランキング
PPA(プロフェッショナル・ピックルボール・アソシエーション)はアメリカを中心とした主要なプロツアーの一つで、契約選手も多く含む団体です。
PPAツアー独自のポイント制度に基づくランキングを発表しており、過去52週間の成績による「52週ランキング」と年間累計の「レースランキング」の2種類があります。
大会のグレード(「スラム」は優勝2000点、「オープン」は1000点など)に応じて獲得ポイントが定められており、選手は大会で勝ち進むほど多くのポイントを得ます。
参考:PPA Rankings




APPツアーのピックルボール世界ランキング
APP(アソシエーション・オブ・ピックルボール・プレーヤーズ)はもう一つの主要プロツアーで、PPAと並行して全米各地で大会を開催しています。
APPも独自のポイントシステムによるランキング(「APP World Rankings」)を発表しており、男女シングルス・ダブルス・混合ダブルスそれぞれでプロ選手の順位を公開しています。



APPはプロだけでなく高レベルアマチュアにも門戸を開いており、ポイントはAPP公認大会の成績に基づいて付与されます。
ただしPPAと同様に、ランキング対象はAPPの大会に出場した選手のみとなります。
PPAとAPPはライバル関係にありトップ選手の囲い込みも行ってきたため、両ツアー間でランキングに掲載される選手が分断されているのが実情です。
例えば、APPランキングではPPA専属のベン・ジョンズ選手の名前は出てこない、といった具合です。


DUPRのピックルボール世界ランキング
最近特に注目されているのが、このDynamic Universal Pickleball Rating、通称DUPR(デューパー)と呼ばれるレーティングシステムです。
DUPRは特定のツアーに属さない独立した仕組みで、世界中のあらゆるピックルボールプレイヤー(プロからアマチュアまで)の実力を数値化してランキング化する試みです。
アルゴリズムによって算出される3桁のレーティング(2.00〜8.00程度の値)が各選手に与えられ、対戦相手の強さ(レーティング)や試合の勝敗・スコア差まで考慮して変動します。



簡単に言えば「誰に勝ったか・負けたか」を反映するため、より選手の真の実力に近いランキングになるよう設計されています。
DUPRは無料のスマホアプリやサイトで利用可能で、試合結果を入力すると自動でレートが更新されるため、プロ以外も含めた膨大なプレイヤーデータが集積されています。
2023年からはプロ選手のレーティング上位者を「プロランキング」として発表し始めており、全ツアー横断で事実上初めて「全プロ選手を網羅した世界ランキング」を実現しつつあります。
DUPRにはベン・ジョンズ選手やアナ・リー・ウォーターズ選手らトッププロも名を連ねており、主要団体(PPAやMajor League Pickleballなど)も公式にDUPRを採用し始めています。


その他(UTRやGPR)のピックルボール世界ランキング
上記以外にも、テニスレーティングシステム「UTR」や、GPR(グローバル・ピックルボール・ランキング)などもピックルボールの世界ランキングとして活用できます。






ピックルボールの世界ランキングシステムを比較
それぞれのランキングには役割や信頼性に違いがあります。
PPAやAPPのランキングは各ツアー内での地位や大会シード決定に用いられる重要な指標ですが、ポイント制ゆえに「どの大会に何度出場したか」が大きく影響します。
極端な例では、世界で最も強い選手が年4大会しか出なくても、そこそこの選手が年12大会に出て中位入賞を重ねれば、後者の方が年間ポイントで上回ってランキング上位になる可能性があります。
一方のDUPRは試合ごとの質を評価に反映するため、「強い相手に勝てば大きく評価アップ、格下に負ければダウン」といった具合に勝敗の内容がダイレクトにランキングに反映されます。
このため現在は「真の実力を測るならDUPRが最も正確」とも言われている状況です。
もっとも、DUPRはあくまで新しいレーティングシステムであり、公式タイトルや賞金が懸かるツアーとは目的が異なる点にも留意が必要です。
各プレイヤー層の対象としては、PPA/APPがプロ選手の公式戦績評価に特化しているのに対し、DUPRはプロから草の根まで含めた総合的な実力評価という違いがあります。






ピックルボールの世界ランキング一覧(2025年版・DUPRベース)
2025年11月のピックルボール世界ランキング
2025年11月1日にDUPR(Dynamic Universal Pickleball Rating)が公開している世界ランキングをもとに、各種目のトップ選手をまとめました。
男子ダブルスのピックルボール世界ランキングTOP 5
| 順位 | 選手名 | 年齢 | DUPR値 |
|---|---|---|---|
| 1 | Ben Johns (ベン・ジョンズ) | 26歳 | 7.285 |
| 2 | Andrei Daescu (アンドレイ・ダエスク) | 37歳 | 7.132 |
| 3 | JW Johnson (ジェイダブリュー・ジョンソン) | 23歳 | 7.090 |
| 4 | Gabriel Tardio (ガブリエル・タルディオ) | 20歳 | 6.983 |
| 5 | Christian Alshon (クリスチャン・アルション) | 25歳 | 6.945 |
女子ダブルスのピックルボール世界ランキングTOP 5
| 順位 | 選手名 | 年齢 | DUPR値 |
|---|---|---|---|
| 1 | Anna Leigh Waters (アナ・リー・ウォーターズ) | 18歳 | 6.787 |
| 2 | Anna Bright (アナ・ブライト) | 25歳 | 6.369 |
| 3 | Hurricane Tyra Black (ハリケーン・タイラ・ブラック) | 24歳 | 6.263 |
| 4 | Jorja Johnson (ジョルジャ・ジョンソン) | 19歳 | 6.261 |
| 5 | Tina Pisnik (ティーナ・ピズニック) | 44歳 | 6.153 |
男子シングルスのピックルボール世界ランキングTOP 5
| 順位 | 選手名 | 年齢 | DUPR値 |
|---|---|---|---|
| 1 | Hunter Johnson (ハンター・ジョンソン) | 31歳 | 6.924 |
| 2 | Ben Johns (ベン・ジョンズ) | 26歳 | 6.906 |
| 3 | Christian Alshon (クリスチャン・アルション) | 25歳 | 6.896 |
| 4 | Quang Duong (クアン・ズオン) | 19歳 | 6.865 |
| 5 | Federico Staksrud (フェデリコ・スタクスルード) | 29歳 | 6.865 |
女子シングルスのピックルボール世界ランキングTOP 5
| 順位 | 選手名 | 年齢 | DUPR値 |
|---|---|---|---|
| 1 | Anna Leigh Waters (アナ・リー・ウォーターズ) | 18歳 | 6.561 |
| 2 | Kate Fahey (ケイト・フェイヒー) | 29歳 | 6.271 |
| 3 | Parris Todd (パリス・トッド) | 27歳 | 6.142 |
| 4 | Brooke Buckner (ブルック・バックナー) | 33歳 | 6.069 |
| 5 | Catherine Parenteau (キャサリン・パレントー) | 31歳 | 6.028 |
ミックスダブルスのピックルボール世界ランキングトップは?
DUPRは男女別カテゴリーのみ公開していますが、実戦での“最強ペア”は依然として Ben Johns(ベン・ジョンズ)/Anna Leigh Waters(アナ・リー・ウォーターズ)組。






最後に
ピックルボールにおける世界ランキング制度は、プロ競技の発展とともに少しずつ形作られてきた重要な仕組みです。
ランキング上位に入ることは選手にとって大きな名誉であり、同時に大会のシード権や年間タイトル争いにも直結します。
実際、PPAツアーでは年間ランキング上位8名(またはペア)がシーズン末の最終戦への出場権を得て、文字通り「世界No.1」のタイトルを懸けて戦う仕組みになっています。
ランキングはまた、スポンサー契約やメディア露出にも影響するため、プロ選手のキャリアにおいて非常に重要な指標と言えます。
しかし現在のピックルボール界には完全に統一されたランキング体系が存在しないのも事実です。



複数の団体が別々にランキングを発表している状況は、ファンにとってやや分かりづらい面もあります・・
とはいえ、近年はツアー間の協調やデータ統合の機運も高まってきました。
特にDUPRの台頭は大きく、世界中の試合結果が集約されたデータベースから算出されるレーティングは、公平性と透明性の面で評価が高まりつつあります。
将来的にはDUPRが事実上の標準指標として定着し、各ツアーもそれを参照する形でランキング制度が一本化されていく可能性もあるでしょう。



ピックルボールは歴史の浅いスポーツゆえ、ランキング制度もこれから洗練されていく段階です。



選手やファンにとってベストな形を模索しながら、より公正で納得感のある世界ランキングが整備されていくことが期待されます。
今後のプロピックルボール界では、「世界ランキング○位の〇〇選手が日本の大会に来る!」なんて日も来るかもしれません。
ランキングの行方に注目しつつ、これからもピックルボールというスポーツ自体の発展を楽しんでいきましょう。









